猫親譲(おやゆず)りの無鉄砲(むてっぽう)で小供の時から損ばかりしている。小学校に居る時分学校の二階から飛び降りて一週間ほど腰(こし)を抜(ぬ)かした事がある。なぜそんな無闇(むやみ)をしたと聞く人があるかも知れぬ。別段深い理由でもない。新築の二階から首を出していたら、同級生の一人が冗談(じょうだん)に、いくら威張(いば)っても、そこから飛び降りる事は出来まい。弱虫やーい。と囃(はや)したからである。小使(こづかい)に負ぶさって帰って来た時、おやじが大きな眼(め)をして二階ぐらいから飛び降りて腰を抜かす奴(やつ)があるかと云(い)ったから、この次は抜かさずに飛んで見せますと答えた。

変な建物親類のものから西洋製のナイフを貰(もら)って奇麗(きれい)な刃(は)を日に翳(かざ)して、友達(ともだち)に見せていたら、一人が光る事は光るが切れそうもないと云った。切れぬ事があるか、何でも切ってみせると受け合った。そんなら君の指を切ってみろと注文したから、何だ指ぐらいこの通りだと右の手の親指の甲(こう)をはすに切り込(こ)んだ。幸(さいわい)ナイフが小さいのと、親指の骨が堅(かた)かったので、今だに親指は手に付いている。しかし創痕(きずあと)は死ぬまで消えぬ。
2009/08/14(金) 13:33 つぶやき 記事URL COM(5) TB(2)

この記事へのコメント

車を並べて停車場へ着いて、プラットフォームの上へ出た時、車へ乗り込んだおれの顔をじっと見て「もうお別れになるかも知れません。
けいこ 2009/08/14(金) 13:40 編集 削除
いよいよ約束が極まって、もう立つと云う三日前に清を尋(たず)ねたら、北向きの三畳に風邪(かぜ)を引いて寝ていた。
高橋 2009/08/14(金) 13:40 編集 削除
地図で見ると海浜で針の先ほど小さく見える。どうせ碌な所ではあるまい。どんな町で、どんな人が住んでるか分らん。分らんでも困らない。
武田 2009/08/14(金) 13:40 編集 削除
しかしこうなると四畳半も引き払わなければならん。生れてから東京以外に踏み出したのは、同級生と一所に鎌倉(かまくら)へ遠足した時ばかりである。
田中 2009/08/14(金) 13:40 編集 削除
き受けた以上は赴任(ふにん)せねばならぬ。この三年間は四畳半に蟄居(ちっきょ)して小言はただの一度も聞いた事がない。
中山 2009/08/14(金) 13:41 編集 削除

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